【15】言質とベッド

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 夕食後、ロビンに送られて、私とクライは、私の部屋に戻った。私は寝台に座りながら、長椅子に寝そべったクライを見る。道中では、ロビンが一途なのか観察してみたが、見慣れた仕事風景しか広がっていなかった。 「イリス」 「なんです?」 「ベッドに行っても良いか?」 「?」  既にこの部屋には、クライのベッドが存在する。ソファからの移動は、自由だ。 「どうぞ?」 「――お許しが出たな」 「え?」  するとクライは、自分のベッドではなく、私のベッドに近づいてきた。そして首を傾げた私を覗きこんだ。 「朝、腕枕をしながら目覚めのキスをするためには、一緒に寝ないとならないからな」 「え」  先ほど言いかけた私の空想を、クライが口に出した。他者から聞くと無性に恥ずかしくなって、私は赤面しそうになった。クライが私の隣に座る。距離が近い。 「本来、一緒に寝るものだし、そもそも寝台を二つ用意する必要が無かったんだ」 「ま、待って下さい、クライ。男の人と同じ寝台で寝るのはダメです」 「お。ちゃんと俺を男だと認識してるじゃないか。偉いぞ」 「……っ」 「何がどうダメなんだ? ん?」  私の顎の下に指を添え、クライが悪戯っぽい目をした。イケメンすぎて目が離せないというよりも、その温度に緊張しすぎて体が硬直した。クライの顔が近づいてくる。私の頭の中は大混乱状態だった。 「ほら」  そんな私を抱きしめて、クライがそのまま寝台に横になった。すると少し位置が代わり、私は完全に腕枕をされていた。 「どうだ? 腕枕の感想は?」 「想像以上に寝心地が悪そうです。だって、硬いんだもの、腕が」 「現実なんてそんなものだ」 「けど、お父様とお母様は、腕枕で眠っております。子供の頃に見ました。今もうっかり朝早くに伺うと、二人は腕枕中です」 「イリス、それはだな、腕枕が良いのではなくて、くっついていたいだけなんじゃないか?」 「え?」 「そういう部分を、一つずつ、俺は優しくお前に教えてやる。だからとりあえず、今夜は一度、俺の腕枕で寝てみると良い」 「それはダメです。クライは自分のベッドに行ってください」 「どうして?」 「それは……」  チラチラとヴォルフ様の顔が浮かんで、罪悪感が押し寄せてくるからだ。 「――召喚獣だから寝ても良いと思わせておいて、後で男と認識させたほうが、効率が良かったな」 「え?」 「あ、いいや、なんでもない。そうだな、いきなり悪かった。俺は自分のベッドに行く」  そう言うと、クライが私から離れて、ベッドから降りた。
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