もどかしい

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『好きになってもいいかな』 八重樫さんの言葉が俺の中に溶けて行って、嬉しさとか感動で鼻がつんとする気がした。 「それってもう好きってことでしょ」 「…うん…そうだね」 笑顔で問いかけた俺に八重樫さんは頬を赤くしてくすりと笑う。彼の中性的な優しい声で好きだって言われてしまうと、腹の奥がじんじんするようななんとも言えない心地になって、世界で一番幸せな人間は自分なんじゃないかって思えてくる。 「八重樫さんもっとキスしてよ」 八重樫さんの首に腕を回すと、彼は驚いた顔をした後に、君って子は…って前にも聞いた台詞を言ってから俺にキスをくれた。 俺からは何もしない約束だから、流れに任せてただ彼から送られる行為を受け入れる。 何度もこういった経験はあるけれど、今までに感じたことの無い熱と快楽にどんどんと思考は彼1色に染められていく。 「このまま食べちゃいたい」 「フッ…」 思わずという風に出た八重樫さんの言葉に、俺も思わず笑ってしまう。まさか自分がそんな台詞を他人から言われる日が来るなんて思ってなくて、なんだか笑えてしまったんだ。 「……笑わないでよ〜」 「……すみません、ついっ…ん」 笑う俺の口を八重樫さんが自分の唇で塞いで、俺たちはくすくす笑い合いながらキスをする。 「風呂行きます?」 「……うん」 俺の言葉に恥ずかしそうに目を細める八重樫さんは、本当に可愛くて綺麗で、この人がアラサーとか絶対なにかの間違いだろって思ってしまう。 年上なのにこの可愛さは本当にダメだ…。 「こっち」 俺が手を引いて風呂まで案内してあげる。 脱衣所につくと、俺は遠慮無く上半身裸になった。男同士気にしていても仕方ないし。 そんな俺のことを八重樫さんがじっと見つめてきて、なんだかその視線に恥ずかしさを覚えて俺はそれを払拭するようにヘラりと笑った。 「えっち〜」 「…っ、あ、ご、ごめん…」 「俺の体に見惚れてた?」 なーんて。 冗談のつもりでそう言った俺を八重樫さんが未だにじっと見つめてくる。 「…うん……そうだよ。星野君の言う通り見惚れてた…。君があまりにも綺麗だから」 本当に冗談のつもりだったのに、そんな風に肯定されると思っていなくて、八重樫さんの言葉にぶわって全身が赤くなるのを感じた。 「照れちゃった?」 「…ち、違いますよ〜」 クスって笑ってそう言った八重樫さんの方が何倍も綺麗だし、今はなんだか色気がやばくて俺がからかってた筈なのに立場が逆転しかけていることに焦る。 そんな俺の焦りを感じ取っているのか、八重樫さんもおもむろにシャツに手をかけて思い切りそれを脱いだ。 「……っ…や、八重樫さん?」 思わず彼のことを呼んでしまう。 白い肌はそこらの女性よりもキメ細やかで眩しいくらいなのに、しっかりと筋肉のついた鍛えられた身体がこの人を男たらしめている様に感じる。 一言で言えばエロかっこいい…。 動揺する俺に近づいてきた八重樫さんはさらりと俺の頬に触れると、お風呂一緒入るでしょ?とだけ言って首筋にキスをしてきた。
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