もどかしい

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じっと志貴さんの瞳を見つめながら彼の言葉を待つ。相変わらず困り顔のまま俺に視線を向けていた志貴さんは唐突に、はぁ…って小さくため息をついて、それを見て少しだけ胸が軋んだ音を立てた気がした。けど、それも彼の次の一言で吹っ飛んでしまう。 「……なんで言っちゃうのかな……また先越されちゃったよ」 へにょりと眉を垂れさせて、本当に悔しそうにそう言った彼は俺の胸の真ん中を片手で軽く押して、俺のことをソファーに転がすと、俺の上に馬乗りになった。 「貴臣ばっかりずるいよ。たまには僕にも言わせて」 「志貴さん?」 彼の顔が俺の目の前に降りてきて、チュッと鼻の頭にキスをされる。 彼の瞳にキョトンとした間抜けな顔の俺が写っていて、彼はそんな俺を見つめながら、優しくするって俺に聞こえるように呟いた。 「……よろしくお願いします」 「ふっ、はい、よろしく。まあ、僕こういった経験があまりないから先輩に教えてもらわないとだけど」 「ははっ、任せてください後輩さん」 冗談を言い合って、笑い合う。 それからどちらともなくキスをして、志貴さんの手が俺の服の中に入ってきた。 「っ、そこなんかゾクゾクする」 志貴さんが俺の乳首を指で掠めると、今までそこで感じたことなんて無かったのに背中と下半身に痺れるみたいな感覚が走って自分でも自分が良くんからなくなりそうだ。 「可愛い」 俺にキスをしながら器用に俺の着ているシャツのボタンを外していく志貴さんは色気がダダ漏れで、今からこの人に抱かれるのかと思うと、つい甘い吐息が漏れてしまう。 筋肉をなぞるように這わされる手が、ズボンにかけられて俺が軽く腰を浮かせるとあっという間にズボンも下着も脱がされてしまった。 ゴクリと上下する喉仏の動きを視界に入れながら、彼が俺で興奮してくれていることに喜びを感じた。 志貴さんの首に腕を回して、志貴さんも脱いでって甘く囁く。 彼から俺と同じシャンプーの匂いがして、そんな些細なことにすらだらしなく頬が緩みそうになる。 こんなにも誰かのことを思って幸せだと感じれる日が来ることを俺は想像もしていなくて、今その幸福が自身の腕の中にあることに本当に感謝している。 俺の手から離れた志貴さんが勢いよく服を脱ぐと、お風呂の時もみたしっかりと筋肉のついた肢体が目に飛び込んでくる。 「……本当に綺麗……」 彼はどこもかしこも完璧で、綺麗で、その全てが俺の事を釘付けにして目を逸らすことも出来ず、息をすることも忘れてしまいそうなくらい夢中にさせるんだ。
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