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僕の言葉に顔を見合せた2人は、とりあえず中に入ろうって僕のことをリビングまで引っ張って行く。
ソファーに腰掛けると、2人もそれぞれ僕の両隣に座ってから詳しく教えてって言ってきた。
僕よりも遥かに歳下のこの子達が今は凄く頼もしく思えて僕はぽつぽつと先程起こったことを話し始める。
話をすればするほど、本当に自分は臆病者で最低なヤツだって自覚させられて泣きたくなった。
どうして貴臣のことになるといつもこう上手くいかないんだろう。ただ、貴臣のことが大切だから僕のせいで傷ついて欲しくないだけなのに……。
「まずは、付き合い始めたんだ。おめでとう」
「……ありがとう」
「それから、兄貴はどうしてそんなに自分に自信がないの?」
瑞貴の言葉に僕は言い返せなくて口ごもってしまう。
貴臣に出会う前は人の気持ちを察するのは得意な方だったし、どちらかというと自信はある方だったと思う。
けど、貴臣と出会ってからよく分からなくなった。貴臣の言葉で一喜一憂して、貴臣の笑う顔を見たくて、自分は貴臣に変なやつだと思われてないだろうか、とか、嫌われたりしないだろうかとか、毎日のように頭を悩ませて。
好きな人の前だと自信を持とうとしても中々難しいんだ。
恋愛初心者の僕は、自分の大きすぎる思いに踊らされて、普段の半分も自分のいい所を出せてない気がする。
「好きな人の前だとどうしても臆病になっちゃうんだよね……瑞貴は違う?」
「……まあ……そりゃあ……」
チラッと平くんに視線を向けた瑞貴は歯切れ悪くそう言ってから、でもって言葉を続けてきた。
「兄貴はもっと自信持っていいと思う。かっこいいんだし。それに、貴臣さんが傷つくかなんて貴臣さんにしか分からないでしょう」
「そうですよ!瑞貴くんの言う通り。どれだけ思ってたって言葉にしないと伝わらないことはありますし、好きな人から離れた方がいいなんて言われちゃったら絶対悲しいと思います」
2人が貴臣の気持ちを代弁するようにそう言ってくるから、僕はどうしたらいいか益々わからなくなってきた。
「……どうしたらいいんだろ」
「兄貴は?」
「え?」
「もしも、兄貴が貴臣さんから同じこと言われたらどう思う?どうして欲しい??」
瑞貴が真剣な顔でそう尋ねてくるから、僕は自分に置き換えて考えてみることにした。
「……離れたくない……。それに、離れないって言って欲しい」
「なら、そうしたらいいんじゃない?」
「……うん」
僕は頷くと、ソファーから立ち上がって家を飛び出した。
貴臣はきっと仕事だから、貴臣の家で彼を待とう……。
それで……ちゃんと話をして……謝ろう。
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