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「ん……」
朝、目を覚ますと窓から射す光に志貴さんの綺麗な髪が照らされて輝いているのが目に入ってきた。
そっとそれを指で掬って、その手触りの良さを楽しむ。
すーすーと心地よさそうにまだ夢の中にいる彼の中性的な顔を見つめながら、この人は本当にどこまでも綺麗だと思った。
こんなに綺麗な人を俺が独占していることに優越感を覚える。
「……貴臣?」
「おはよう、志貴さん」
「……ん〜……まだ眠い……」
「っ、ちょっ……あはは」
薄らと目を開けた志貴さんが俺の首に腕を回してきて自分の胸の中に俺の事を閉じ込めてきた。
彼の体温と匂いに鼓動が少しずつ早くなっていくのに、当の本人は俺を抱き枕にしたまま、また夢の中へと旅立とうとしている。
「……かわいい」
彼は優しげで、何処までも綺麗だけど、少しだけ臆病な所もあって、それから朝が少しだけ弱くて、俺より年上なのに本当に可愛いらしい人だ。
そのギャップがもっと俺の事を夢中にさせる。
「寝坊助」
「……うるさい……」
笑いながら言ってやれば、志貴さんが不満げに返事を返してきて俺の事を更にギュッて抱きしめて俺の頭に1つキスを落とす。
ああ、もう……本当に好き。
「志貴さん今度ハワイ行きましょうよ」
「……なんでハワイ?」
「ハワイなら結婚できるでしょ」
「……結婚……結婚!??」
「あ、起きた〜」
俺の言葉に飛び起きた志貴さんに笑みを浮かべると、さっきまで眠いって言ってた人とは思えない程に顔を真っ赤にさせた彼が視線をさまよわせてから、またそろりとベッドの中に身体を沈める。
「……いつか……行こう」
「っ、はい」
くすくすと笑いながら返事を返すと、志貴さんがまた俺を抱きしめてきて、俺はそれに更に笑みを深めた。
こんな風に志貴さんと笑えることが本当に幸せだと思う。
俺達の関係は始まったばかりだけど、きっと何十年後もこうやって2人で笑い合ってるて確信が持てるんだ。
だから、これからもよろしくお願いします。
「志貴さんこっち向いてくださいよ」
「……なーに?」
「一緒に住みません?」
「……君って本当に……」
「ダメですか?」
「……っ、ずるいよね、本当に」
「お互い様でしょ」
俺の言葉に志貴さんが、そうだねって吹き出すみたいに笑って、俺もそれにつられて笑う。
これから先もずっと貴方の隣で貴方のことを支え続けたい。
そうして、歳をとったらあの時はあんなことがあたって2人でお茶でも囲んで思い出話に花を咲かせられたら幸せだって思うんだ。
fin.
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