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彼は困った顔のまましばらく花束を見つめていたけれど、ふと顔を上げて俺の目を真っ直ぐに見てきた。
「どうしてそこまで僕に良くしてくれるのかな?僕達ってまだ数回しか顔を合わせていないと思うんだけど」
「言ったでしょう。一目惚れしたんです」
「…うーん…。言っておくけど僕、こう見えてもうアラサーだし、君は顔も整っているし地位もあるから女の子からは引っ張りだこだと思うんだけど」
「まあ、確かにモテはしますよ〜。まだ俺26ですし」
「ならどうして僕?アラサーでしかも男だよ」
「んー、まあ、確かに今までは女の子としか関係を持ったことは無いです。けど、確かに俺は八重樫さんのことが好きだって思うんですよ」
彼の質問にヘラりと笑って返すと、彼は一瞬間を置いてから、また俺に質問を投げかけてきた。
「なら、君は僕に抱かれても平気なの?男と恋愛するってそういうことだよ」
俺の考えを変えさせるためなのか、あえてそんなことを諭すように言ってくる彼を見つめながら、舐められたもんだなってつい思う。
俺はその挑発に乗るようにテーブルに頬杖を付いて、彼の顔を覗き込みながら顔を寄せると、口角を上げてあえて甘い声で返事をしてやる。
「あんたになら抱かれてもいいよ。何処までも綺麗なあんたになら俺の全部見せてあげる」
「…っ、君って子は…」
他のやつとヤレって言われたら全力で拒否するけど、この人となら…八重樫さんだから抱かれてもいいと思う。
真昼間からする話じゃねーなって内心では思うけどな。
「ねえ、1回俺の事抱いてみる?」
「…何言ってるの。ダメだよ」
「八重樫さんから話振ってきたのに?」
あんだけ女の子引き連れてるならヤリまくってる筈なのに、ダメだよ、なんて聖人ぶって俺に笑いかけてくるんだから腹が立つ。
アラサーとか男とか俺には関係ないし、彼の平等にも従うつもりは無い。
俺はそっと、空いている方の手を何も言わずに目の前の彼の頭に回すと、驚いてなにか言おうとする彼を無視して強引に彼の唇にキスをした。
「星野君!?」
彼が後ろに下がったことで一瞬で離れた自分の唇を舌で一度だけわざと舐めると、彼はそれを視界に入れて、困ったなあって小さく呟いた。
「俺、めちゃくちゃしつこいですよ」
普段から対して周りに興味は湧かないし、一人でいるほうが好きだ。だけど、興味が湧いてしまった時の俺は弟もウザがるくらいそれに夢中になってしまう。
仕事もその1つだ。
そんな俺の興味を八重樫さんが刺激したから。
絶対、彼の心に入り込んでやるって決めた。
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