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その時、速く鋭い足音が近づいて来ている事に気が付いて、彼らはその方を振り返った。
境内までの長い階段を、一人の男性が駆け上がって来ている。やがて一たちの傍までやって来るが、彼らに気が付く様子もなく、切らした息もそのままに、男性は賽銭箱の前に立った。
からり、と硬貨を投げ入れ、手を合わせる。ぎゅっと目を瞑り、肩にまで力を入れていた。
そして彼は、何度も何度も、小さな声でこう呟いていた。
「どうか……どうか千春さんが、無事に目を覚ましますように……お願いします……お願いします……!」
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