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「あの人……」
男性の様子に千春も気が付いたようだ。
「何か思い出した?」
一が問うが、千春は困った表情で首を横に振る。それでも一は、優しく微笑んで見せた。
「大丈夫。もう彼の所へ帰れるからね。そしたら記憶も元通りさ」
「あの人って……?」
「君たちにとって、大切な人だよ」
行こう、と一は千春の手を取る。これから病院へ行って、千春を元に戻せば一件落着だ。だから、これが彼女の手に触れる、最後のチャンスだ。
「キンダイチ先生」
千春の声がする。一は振り返らないで返事をした。
彼女は言った。
「どうして……私の事を助けてくれたんですか」
「……それは僕が――」
一は、力強く答えた。
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