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自身の墓を探偵事務所として開業している一のもとには、今日も様々な悩みを抱えた幽霊や人間がやって来る。彼らの話を聞いたり手紙を読んだりするので、今日も彼は忙しなかった。
「僕に解決出来ない事件はない! どんなドロドロ事件も、ヒュ~っと解決です!」
「お前な、勘違いしてるみたいだけど、その決め台詞かっこ良くないからな」
万吉も、時折手伝いに顔を出しては、一に振り回される日々を送っていた。
千春については、後遺症も残る事なく無事退院し、新しい家族と共に元気に暮らしているらしい。京からの手紙でそれを知った万吉だったが、その事は上手く一に伝えられないでいた。
「それじゃあ、俺はそろそろ……」
今日もいつものように、墓を後にしようとする万吉。ああ、今日も言えなかったと、後悔の念が湧く。
ドアの方へ踵を返そうとしたその時、ふと、机の上に置かれた写真立てに目が行った。
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