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エピソード1
夕日が沈むころ、帰宅途中の少年は、くわえていたアイスを落とした。
透き通るように美しい肌、雄大に広げられた真っ白の翼、そして頭の上で神々しさを放ちながら浮かぶ黄金色の輪。目の前に現れたのは、現実味を帯びた住宅街とはかけ離れた存在、まさしく『天使』だった。
その天使は、少年に優しく呼びかける。
「あなた、私のことが見えるのですね、心が清らかな証拠です。」
驚きで声を出すことすらできない少年の顔を、天使の柔らかな手が包む。
「私たち『天使』の宿命は、あなたのような心の清らかな人間の願いを叶えることなのです。さあ、あなたの願いを教えてください。」
「今は…ありません。」
少年はくぐもった声で、精一杯の返事をする。
「…そうですか。ならば、あなたに願いができた時、私を呼んでください。きっとあなたの力になるでしょう。」
天使は、そう言ってほほ笑むと、ロボットのように頷く少年を残し、青空の彼方へ羽ばたいていった。
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