玉の枝の呼び声

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 ぼくは、ふうとため息をひとつつき、あの脳裏に焼きついた夢の映像を思い出してみた。今でも鮮明にそのイメージはまぶたの裏に張りついている。そっと手を伸ばせば、あの花に触れることができてしまうかもしれない。そんなはっきりと具現化されたぼくの夢像。 「いや、夢はふつう、一般的にはですよ。本人が見聞きした記憶の中から登場人物、風景、シチュエーション、配役などが決定され、ふつうは第一人称視点、つまりあなた自身の視点で描かれることが多いです。稀ですが第一人称視点が俯瞰視点と同じ目線になることもあります。夢の中の自分が浮遊している状態ですね。しかしそれも、我々が普段から物語などでそういう状態の夢が描かれているのをメタ認知として知っているからです。はい、そうですね。それが我々の見る夢の限界。夢の世界が荒唐無稽のように見えても、あなたの知る認識の枠を超える事はない。それが夢の本質であるはずです。しかしあなたの語る夢は、その枠組みから完全に逸脱してしまっている。」
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