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「私はね。君から悪夢を取り除いてね。もとの仏頂面だけどときどき愛嬌のある
君に戻って欲しいんだよ。富人。君の魂をその桃源郷の皮を被った地獄から呼び戻さなくては。なあ。また大白と三人で、学生時代のようにバカやって楽しもうなあ。」
「ぼくのねがいも、またさんにんで。」
「ああ、絶対にな。」
武、大白、ありがとう。“蓬莱の玉の枝”を探して道に迷ったぼくの魂を必死の叫びで呼んでくれて。大丈夫。これは悪夢なんかではない。結局、“蓬莱の玉の枝”そのものは見つからなかったけれどね。もっと大切なものを見つけたよ。それはたしかに存在する。人の心の中に。それがあるおかげで、ぼくはほんとうの悪夢を振り払うことができたんだ。そうだよね。
また三人でいっしょにふざけ合えるその日まで、もう少しだけ、呼び込んでくれないか。ぼくの魂が迷わないように。
おしまい
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