プロローグ

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 塔矢side  塔矢は、涙を滲ませながら一条の話をする真下のことを抱き締めてやりたいと思っている。  だが、恋人がいる真下に触れることなんてできない。  真下に『会えないか』なんて言われてすぐに思い上がってはいけない。  真下は一条の恋人で、真下が抱き締めて欲しいと思っているのも塔矢じゃない。一条だ。  真下に、一条なんてやめて、俺と付き合わないかと言いたい。あんなクソ男に苦しめられる真下なんて見たくない。一条なんかよりも、自分の方がよっぽど真下を幸せにできるという自負すらある。  でも、きっと真下は一条との関係をなんとかしたいから、一条とは別れずに、塔矢に相談を持ち掛けてきたのだろう。  真下の幸せを願うなら、真下と一条がうまくいくようにしてやるべきだ。 「真下。俺に考えがある。お前をないがしろにする一条にわからせてやるんだ」 「え……?」  真下はそこまでは思っていなかったようだ。真下は心の優しい奴だから復讐みたいなことなど考えもしないのだろう。 「ちょっとだけ協力してくれ。あいつを見返してやるんだよ!」 「別にいいよ、塔矢。そんなつもりでお前にこの話をしたんじゃない」 「俺の気がおさまらない。真下をこんな目に遭わせた野郎を俺が許すわけがないだろっ!」  このシナリオの主演は一条×真下。塔矢に与えられた役は、二人の恋を成就させるために存在する悪役だ。
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