♭16(前巻からの続き)

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既にヘルやカトレアも大魔王アデルと同じくトニーの出自を何となくは認知しているが、結局のところは別にどうでも良いというのが正直な感想のようだ。大魔王アデルや大魔女エリーゼはかなり興味を持っていたが。 「それより俺の剣を返せ、ちびっ子!宮廷魔術師の嬢ちゃんの杖もだ!」 「返してもいいけど振り回さないでよー?当たったらヘル閣下が可哀想じゃん」 「叩き斬るに決まってんだろ!」 一向に落ち着きそうにない小隊長とは対照的に、クロエは大きく息を吐いて深呼吸した。 「分かった。確かに将軍の言う通り、こんな機会は滅多にないはずだ。初めは幻術でも見せられているのかと思ったが、どうやらこの状況は現実らしい。それに……我々がどう足掻いたところでこの場では無力なのだろうからな」 「だとしても華々しく散るのが衛兵の矜持だろうがよ!」 「いや、私は衛兵ではないのだがね。彼と……カトレア嬢もか。とにかく彼らは魔族かもしれんが、今までに何度かパリを襲って来た連中とは別人だ。バレンティノ将軍の知り合いなのであれば我らに危害は加えまい」
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