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カトレアが今度はトニーの横に移動し、扉側のウィリアム達と対面する位置となった。
本当は手でも繋ぎたかったのかもしれないが、遠慮がちに夫のズボンの裾をつまんでいる。
トニーはそれを一瞥しただけで無視したので、裾を掴まれるくらいは許容範囲らしい。
彼を怒らせたかと思えば、次の瞬間にはよく理解している一面も見せ、まるで長年連れ添った夫婦の様相だ。見た目は夫婦というより親子だが。
「オースティンは知ってるな。魔王正規軍の副長。団長は俺が殺したから、事実上の軍のトップだ」
「お互いに仇同士だと、恨まれようも凄そうだな」
「知るか。それで、そいつが襲撃してきた。場所はもう一つの砦の方だ」
ウィリアムが思っていた通り、事件現場はこちらではなかった。トニーがそんなところに滞在するわけもない。
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