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なお、残る二人は金目当てかもしれないが、俺がこの企画に参加した理由は明白である。俺が行けば、必ずここで本物の殺人事件が起きる!という確信があったからだ。俺は自分の謎補正を信用していた。名探偵と呼ばれる人物がいるのに事件を起こすなんて犯人も馬鹿だよなぁとは思うが(しかも今回は刑事までいる)、何故かそれでも起きる時は起きるのである。まるで、探偵に謎を解かせるために事件を起こすかのように。
「今回は、よろしくお願いいたしますわ、皆様方」
そして、その牛頭川大吉の妻が、牛頭川美恵子、五十一歳。旦那に負けず劣らずの豊満な女性であり身長も大きい。スーツ姿の夫に対して派手派手の真っ赤なドレスを着こんでいた。丸く膨らんだスカートを持ち上げて品よくお辞儀をすると、その足首が露出することになる。真っ赤な靴に、ギラギラの青いラメが入ったタイツを着ているらしい。スカートでどうせ見えないのに、何でそんなところに拘るんだよと思わずツッコミたくなった。夫も夫だが、妻もかなり趣味が悪いらしい。
そして、かなり年嵩の夫婦ではあるがまだ娘は小さいようだった。その恵美子の後ろにぴったりとひっついているのが、まだ七歳の牛頭川瑠璃。小学校一年生、にしてもかなり小柄だが、とっても器用だし運動神経もいいんですよと妻は笑った。ボブヘアーの幼い少女は、終始無言で俺を見ていた。
――それに、コックが一人、秘書が一人、執事が二人にメイドが二人、か。
とても広い屋敷である。そんな人数で、果たして仕事を回せるのだろうか、と俺は純粋に疑問に思った。掃除をするだけでかなり大変だろうに、と。
すぐ後で、牛頭川家の家長である大吉が人件費をケチり、最近数人の使用人をやめさせたらしいという噂が耳に飛び込んできた。ついでに、メイドの一人と不倫しているらしいという話も。
俺はそれなりに愛想よく家族と使用人たちの話を聞いて回りながらメモを取るのである。
家長:牛頭川大吉(52)
→黒スーツの中年デブ。金持ちだけど使用人の給料はケチる。浪費家。鞠枝と不倫疑惑あり。
妻:牛頭川美恵子(51)
→真っ赤なドレスの中年デブ。旦那の浮気に気づいてるかもしれないって噂。
長女:牛頭川瑠璃(7)
→七歳にしてはかなり小柄。無口。可愛い。
メイド:鞠枝(22)
→ロリ顔っぽい美人メイド。大吉と浮気しているらしい?
――お膳立てされすぎてね?
俺は呆れてしまった。こりゃ、今夜にでも大吉が殺されるフラグがびんびんである。むしろ、これで殺されなかったらその方が驚きだ。
「台風が近づいているらしいぞ。暫く船が来れなくなるかもしれないそうだ」
そして、しれっと携帯で天気予報を確認した顔なじみの刑事こと神楽坂があっさり言い放つ。
フラグの役満である。
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