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***
案の定、と言うべきか。
翌朝、事件は発生したのだった。
「あなた!あなた!どうかなさいましたの!?」
妻である美恵子が、大吉の部屋の前で騒いでいる。今日も昨日とそっくりの派手な赤いドレス姿だった。一緒にいるのは、ミステリー参加者の麻生和歌子。なんでも、朝ごはんの時間になっても大吉が起きてこないのだという。部屋に鍵をかけて閉じこもったまま出てこないのだそうだ。
俺は念のため、自分も鍵を確認させてもらった。密室のお約束。本当に鍵がかかっているかどうか、は探偵自らが確認しなければ誤認に繋がるのだ。なるほど、確かにしっかりドアには鍵がかかっているではないか。
騒ぎを聞きつけて飛んできた瑠璃に、美恵子がマスターキーを持ってくるように言いつけた。この間に、次々と屋敷内にいる人物が集まってくる。最終的には幼い瑠璃と、食堂で支度をしているであろうコック一人執事一以外の全員が揃っていた。
「貸しなさい!」
美恵子は瑠璃から鍵をひったくるとそれで開錠し(探偵である俺がしっかり手元を見ていた、その鍵で開けたのは間違いない、すり替えトリックなどなかったと保障しよう)、部屋に入室。中の様子を見て数秒呆然と佇んだあと、悲鳴を上げたのである。
「あ、あなたぁ!」
陸の孤島での殺人事件はお約束である。ソファーで横になった状態で、大吉は死んでいたのだった。その胸に、クッションを貫いたナイフが刺さったままの状態で。
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