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その時ロフトのカーテンが開き、木乃香がひょっこり顔を出した。
「犬飼さん、部屋着とかありますか?」
「うん、一応あるよ。下着と部屋着と服が数枚」
「それなら良かったです」
木乃香はモコモコのワンピースを着て梯子から降りてくる。海斗は思わず息を飲み、頬が熱くなるのを感じた。
なんだか小動物みたいじゃないか? 全体的にホワッとした感じで、なんというか……そう、ウサギっぽい。ふわふわして触りたくなる。
「もし良かったら先にシャワー浴びちゃってください」
木乃香がユニットバスのドアを開けて、タオルを出そうとした時だった。急に背後から海斗に抱きしめられる。驚いた木乃香は一瞬呼吸を忘れてしまった。
そんなことをしてしまった海斗も、自分の行動が理解できずに戸惑ったが、優しい香りと抱き心地に心が緩む。
「……やばい、抱き心地良すぎる……」
「あの……それは私がぽっちゃり体型だからでしょうか。それとも服のせいですか?」
海斗はハッとして離れようとしたが、疲れていたせいか、つい心地良さに浸ってしまう。
「……両方って言ったら怒る?」
「いえ、全然。私、自分の体型がそんなに嫌じゃないので、むしろ肯定してもらえたら嬉しいです。ただ抱きつくのはいかがなものかと……」
肯定してもらえたら嬉しい? そんなことってあるのか?
あぁ、そうか。わかった。さっきから木乃香ちゃんのそばが心地良い理由。彼女からは否定的な言葉がないんだ。こんなどうしようもない理由で頼ってきた俺ですら受け入れてくれる。そう思うと、何故か胸が熱くなる。
「……言ったよね、男の免疫つけさせるって。男に抱きしめられるってこんな感じだよ。もう少しこのままでいて」
ちょっと言い訳がましいだろうか。だけど離れるのがもったいないって思ってしまった。
「わ、わかりました。この感覚に慣れろってことですね。でもドキドキしちゃいますね」
「そう、そのドキドキに慣れて」
木乃香の耳が赤くなっているのに気付いて、海斗自身も鼓動が早くなるのを感じていた。
木乃香ちゃんの反応が初々し過ぎるから、俺までちょっとおかしくなってる。
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