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とある高校の体育館、1人の男子がバスケの練習をしています。
周りには数人の女子が彼を見て騒いでいる中、入口の扉から、そっと覗く女子が1人居ます。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
小さな町の小さな洋菓子店『ヘンゼル』に高校生の女の子がやって来ました。
(カランカランカラン。)
「いらっしゃいませ。」
店の主人が対応する。
「お客じゃないんです…。」
小さな声の女の子に店の主人は。
「アルバイトか何かかい?」
女の子は首を振り、少し大きな声で。
「チョコレートを作りたいんです!」
店の主人が話を聞くには。
**********
彼女の名前は『薫』
同級生の男子『聡』の事が好きで、去年のバレンタインに告白するため、チョコレートを作ろうとしたが、失敗してしまい、告白出来ずに終わったらしい。
**********
「今年は失敗したくないと?」
薫は頷く。
「どうかお願いします。」
薫は頭を下げる。
店の主人は腕を組み、暫く考えた後。
「まあ、お菓子を作りたいとお願いされたらお菓子屋は断れないなぁ。」
店の主人は薫の願いを聞き入れた。
「ありがとうございます!」
薫は満面の笑みを浮かべた。
「材料は用意しておくから、明日来なさい。
後、作りたいチョコレートの形があるなら、絵を描いて来て。」
薫は頷くと嬉しそうに店から出て行きました。
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薫の部屋。
「やっぱりハートかな。」
薫は作りたいチョコレートの絵を描いていく。
「何か違う、これも違う。」
何度も何度も描いては捨て、描いては捨て、ゴミ箱が一杯になりそうなくらい描きました。
「これでいいかな。」
薫はハート型の白と茶色の2層のチョコレートに星を散りばめた絵と、チョコレートを入れる箱の絵も描きました。
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次の日、薫は朝からヘンゼルにやって来ました。
(カランカランカラン。)
「おはようございます!」
薫は元気一杯です。
「おはよう薫ちゃん。」
店の主人は笑顔で迎え入れる。
「今日はよろしくお願いします。」
薫は頭を下げる。
「店は休業日にしたから、思う存分頑張りなさい。」
薫は笑顔で頷いた。
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薫は借りた白衣に着替え、コック帽を被り厨房に入る。
「似合ってるね。」
店の主人に誉められ顔を赤くする。
「作りたいチョコレートの絵は描けたかな?」
薫は頷き、描いた絵を見せる。
「ミルクチョコとホワイトチョコの2層だね。」
薫は頷き。
「この星なんですが…。」
薫は指を指し、店の主人が見る。
「小さい星をチョコで作りたいのですが?」
店の主人は腕を組み。
「星のチョコは難しいかな。」
店の主人の言葉に薫は顔を下に向ける。
「作れない訳ではないんだけど、今日だけで作るのはちょっとね。」
薫は残念そうに頷く。
「代わりに、アーモンドを細かくしたのに銀箔をコーティングしたのを作ってあげよう。」
薫は顔を上げ。
「本当ですか?」
店の主人は頷く。
「それじゃあ、作ろうか。」
薫は頷く。
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「まずは ミルクチョコとホワイトチョコを刻もう。」
店の主人がまな板と包丁とクッキングシートをテーブルに置く。
「できるだけ細かく均等に刻んでね。」
薫は頷くと、包丁でチョコを刻んでいく。
(トントントン。)
店の主人はウンウンと頷く。
「次は刻んだホワイトチョコを溶かそう。」
店の主人はお湯の入ったボウルと、チョコを入れるボウルを持ってきた。
「温度調節はするから、溶け残りがあったら混ぜてね。」
薫は頷く。
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数分が過ぎ。
「少し混ぜて。」
薫はヘラでチョコを掻き混ぜる。
「これくらいかな。」
湯煎の後、テンパリングをした。
次に店の主人は、後ろからクッキングバットとハートの型を取る。
「ゆっくり型に流し込んで。」
薫は頷くと、ボウルから型に流し込む。
「ホワイトチョコは冷蔵庫で冷やそう。」
薫は、バットを冷蔵庫に入れる。
「次は、星を作ろう。」
店の主人が、アーモンドを細かく刻む。
「あの、ミルクチョコは湯煎しなくて良いのですか?」
薫は店の主人に尋ねる。
すると、店の主人は頷き。
「ホワイトチョコが固まってからミルクチョコを湯煎するよ。」
薫は頷き納得する。
「刻んだアーモンドを、この銀箔でサンドするよ。」
薫は、銀箔の上に刻んだアーモンドを散らす。
「これで良いですか?」
店の主人は頷き、上から銀箔を乗せる。
「これで油取り紙の上から押さえて、紙を捲れば、後は丁寧にアーモンドの部分を取れば星の完成だ。」
薫と店の主人は一粒一粒取りだした。
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そして1時間ほどが過ぎ。
「そろそろホワイトチョコが固まった頃だから、ミルクチョコを溶かそう。」
薫と店の主人はミルクチョコを溶かし、固まったホワイトチョコの上に流し込みまた冷蔵庫に入れる。
「固まるまでにチョコを入れる箱を作ろう。」
薫と店の主人はキッチンから移動し、事務室に入る。
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「このパソコンで箱を作るんだけど、描いた絵をスキャナーに入れて。」
薫はスキャナーに絵を入れると、パソコンに絵が読み込まれる。
店の主人は、箱の型を絵に合わせる。
「側面と底の模様も同じで良いかな?」
薫が頷くと、店の主人はパソコンを操作し、印刷を押すと、箱の型が出てきた。
「これを後で組み立てようね。」
冷蔵庫に入れてから、20分程過ぎた頃。
薫と店の主人は、またキッチンへへ戻り、半冷蔵庫からチョコを取り出す。
「ちょうど良い頃合いだね。」
ミルクチョコが半分固まった頃合いだった。
「このアーモンドを乗せていこう。」
薫はアーモンドを散らしていく。
「これくらいかな。」
店の主人は頷き。
「後は固まるまで冷蔵庫に入れておこう。」
薫は冷蔵庫にチョコを入れる。
「残ったチョコは食べちゃおう。」
店の主人はクッキーを皿に出す。
「チョコの2度漬けは禁止だよ。」
笑いながらクッキーをチョコに浸ける。
薫も同じようにしてクッキーを食べる。
そして、食べ終わると、調理器具を片付け、箱を組み立てた。
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そして、30分程が過ぎ。
「もう固まってる筈だよ。」
薫が冷蔵庫から取り出し型から外すと、ハート型のチョコが綺麗に出来上がった。
「綺麗に出来て良かったね。」
薫は満面の笑みを浮かべ。
「ありがとうございます!」
薫はお辞儀をする。
「じゃあ、箱に入れよう。」
薫はチョコを箱に入れリボンを結んだ。
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店の前で薫が。
「本当にありがとうございました。」
薫が頭を下げると店の主人が。
「頑張ってね。」
薫は笑顔で頷くと帰って行った。
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そして、金曜日のバレンタイン当日。
学校のお昼休み、薫は屋上に向かっていた。
他の男子から聡の場所を聞いたからだ。
(ガチャ!)
「ん?君は隣のクラスの…。」
薫は頷き。
「薫です。
聡くん、放課後、ここに来てください!」
薫は頭を下げる。
「部活あるから、終わってからでいいなら…。」
薫は頷くと聡は屋上から出ていった。
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放課後になり、薫は屋上へ向かう。
「ねえねえ、その袋何入ってるのさ。」
3人の女子に呼び止められる。
「え、これは…。」
一人が袋を奪う。
「あっ!」
奪い取った袋を開ける。
「チョコ入ってるよ。」
袋から取り出す。
「返して。」
薫が取り返そうとすると、チョコを別の女子に投げる。
「聡くんにあげようなんて許さない!」
〔そうよそうよ!〕
女子の言葉に2人が合わせる。
「返して!」
薫は取り返そうとチョコを追う。
すると、一人がチョコを持って屋上に逃げ、2人も続く。
「返してー!」
薫も追いかけて屋上に上がる。
3人の女子は、薫に取られないように屋上を逃げ回る。
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(ガチャ!)
部活が終わった聡が屋上に上がってきた。
「さ、聡くん!?」
薫がチョコを取り返そうとしているところだった。
「何してるんだ?」
3人の女子は聡の方を向き。
薫はチョコを取り返し後ろを向く。
〔え、えっと…。〕
3人はアタフタする。
「聡くんは何で屋上に?」
聡に聞く。
「俺は、薫さんに呼ばれたから来たんだけど。」
3人の女子はキョトンとして。
「そ、そうなんだ…。」
3人はそそくさと屋上を降りていった。
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「3人は降りていったけど?」
薫は振り返り。
「う、うん…。」
少しの沈黙が流れ。
「さ、聡くん。」
聡は薫を見る。
「ずっと、見てた。」
聡は頷き。
「知ってる、試合の時、遠くに居たの気付いてた。」
薫は顔が赤くなる。
「あ、あのチョコレート!」
薫は聡にチョコを渡す。
「あ、ありがとう。」
聡は顔が赤くなり、頭を掻く。
「聡くん、ずっと好きでした。
付き合ってください!」
薫は勇気をだし告白する。
そして、また少しの沈黙が流れ。
「う、うん、俺で良ければ…。」
薫は顔を上げる。
「ほ、本当に?」
聡は頷く。
「良かった。」
薫は胸を撫で下ろす。
「じゃあ、帰ろうか?」
聡が薫に聞き手を差し出す。
「うん!」
薫は笑顔で応えると、聡の手を取り一緒に下校した。
§おしまい§
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