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プロローグ
俺には幼なじみがいる。
幼稚園も、小学校も、中学校もずっと一緒。
気が弱くて、ちょっといじられてはすぐに泣く
男のくせにクラスの女子より体も小さくて、
ヒョロヒョロのもやしみたいなヤツだ。
いじめられて泣いてるそいつを、俺はよく
優しい兄の様に慰めた。
だって、泣き顔が可愛かったから。
皆はソイツのことを面倒くさがったけど、俺は
一度もそんな事思ったことはない。
泣いてる時が可愛いなんて、ちょっとヤバイ
感情だったかもしれないけど…
とにかく俺はソイツが泣く時いつも側にいて
肩を撫でて、頬をつねり、涙が消えて笑顔になるまで
一緒にいた。
俺は… クラスによくいる平均点の男。
良くも悪くも目立たない。
成績も運動も、見た目だって中の中という感じ。
派手な事はしないけど、物静かでもない。
卒業後数年で、担任だった教師に名前を忘れられる…
そんなタイプのつまらない人間だ。
成績はそれなりに良かったソイツと、同じ学校に
行くため、密かに猛勉強をして同じ高校に合格した。
もしも高校でいじめられたら、俺がそばに
いてやらなきゃ…そう思っていたから。
でも、思ったような高校生活にはならなかった。
高校生になって急にソイツは変わっていった。
どんなふうに、と聞かれると難しい
1つ確かな事を上げるとすると…
以前よりもソイツは孤立するようになった。
そう、Ωになって変わってしまった。
目覚めはとても遅かった。
普通、中学生にもなれば性はハッキリするのに
ソイツは中学校生活で、一度も発情することは
なかった。
だからきっと…俺と同じβなんだ。
そう思っていた。いや、思おうとしていた。
でも心のどこかで、ソイツはΩだと気づいてた。
ソイツは、良くも悪くも人を惹きつける
魅力があったから。
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