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僕には子供の頃から好きな人がいる。
家が近所の幼なじみ。
…とは言ってもあっちは僕という人間を
“幼なじみ”なんて認識はしてないかもしれない。
ただ小学校からずっと同じ学校に通ってただけの存在。
それくらい僕と彼では住む世界が違っていたから。
僕は、小さな頃から、よく友達にからかわれたり
物を取られたり…いい思い出が少ない。
彼はそんな僕に見向きもせず、助けられるどころか
優しい言葉をかけてもらったこともない。
それでも僕が惹かれてしまったのは、単純に彼の
容姿のせいだったと思う。
お婆さんがスイス人だという彼の肌は陶器のように
白くなめらかで、髪も目も色素が薄く
子供心にも、彼の美しさが群を抜いていることは
分かった。
そして何をするにも落ち着いていて、他の同級生
には無い品のようなものを感じていた。
それに比べて自分はなんと貧相なルックスか…。
白いとは言っても彼とは質の違う、ただ血色の悪い
不健康な顔色。
食べても太れない体質で、男のくせに
ヒョロっとしたモヤシのような体型。
運動も苦手で、体育の時間が苦痛だった。
勉強はそれなりにできたものの
人に自慢できるほどの成績でもない。
なにかと不器用で、まわりの皆のように上手に
立ち回れず、気づくと人をイラつかせてしまう。
自信の持てるものが1つもない。
そんな僕にとって真逆にいる彼は
妬ましさとともに、憧れの存在だった。
その憧れが恋愛感情に変わったのは中学の時だった。
中学校に入ってすぐの出来事…。
その出来事がなければ彼と僕の人生は交わる事は
なかったのかもしれない…。
その日のことはずっと忘れられない
僕の大切な思い出として、何度も思い返す事になる。
その、些細なできごとから、ずっと…
彼は僕の神だ。
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