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「ねぇ、ほっといていいの?」
「な、に、を!?」
一語ずつ強めに濁点がついてるかのような返事をした朝陽の横顔を見て、飛和は気づかれないようにはぁっと溜め息をついた。
「一定の距離とってこちらをちらちら見ながら、意味もなく棒切れで穴掘ってる勇飛のことだよ。分かってるんでしょ。ほっといていいの?」
いかにも、俺いじけてますからアピールのように小さくうずくまって、穴を掘り続ける勇飛は、ちらちらと朝陽を見ている。
「なにそれ。誰の事だったかしら」
その名前を口にするなとばかりに睨まれてしまった。
どうにも朝陽と勇飛は仲が良いのによく喧嘩をする。
あれだな、喧嘩するほど仲が良いってやつ。
喧嘩というか、兄がヘマをして朝陽が怒っているという構図ばかりか。
隣で竹刀を振っている朝陽姫というか幼馴染みを盗み見る。
ほら、こうして真剣に竹刀を振ってる姿は男じゃないか。
なんでみんな騙されるかな。
まぁね、表ではこんな竹刀振ってないし、おしとやかにしてるし、遠目で見れば綺麗な姫なんだろうけど。
勇飛は内面込みで綺麗って言ってるんだろうけど、朝陽には伝わってないんだよな。
朝陽も朝陽で、勇飛に言われると異常に嬉しそうな表情になってるのに、自分で気づいてないんだか認めたくないんだか。
はぁ、もどかしい2人だ。
まだまだ子供なんだろうなきっと。
自分は精神的に2人よりも大人だと思っているので、いつももどかしい気持ちで見ている飛和。
大人しく冷めているように見えて、実は朝陽と勇飛を大事に思っているし、同性という垣根なんて障害気にせず、2人には幸せになってほしいと考えているのだった。
「飛和!隙あり!」
「いっ、っつぅ……」
「はーはっは、剣のお稽古中なのにボーっとしてたろ。おっと、ボーっとしてましたわよ」
「姫、お手合わせ願いたい」
竹刀をしっかり握り直す飛和。
全く、こちらはあなたと兄の事でやきもきしていたというのに。
「こちらこそ。素振りばかりで暇になっていたところよ」
少し離れたところから、なんで俺のひぃ様と飛和が二人で仲良くしてんだよと、ヤキモチをやく勇飛。
「いざ!」
あっ、この顔をした時の朝陽は…本気でくる!
朝陽が手加減なしで、本気でくるとあっさり負けてしまう飛和なのだった。
痛いなぁ。少しは打たせてくれてもいいのに。このお転婆姫の打ち込みをかわしながら攻撃を仕掛けるなんてこと出来るのは勇飛だけ。
朝陽の気分を変える為にも手合わせ願ったのだが、思いの外本気を出させてしまい、自分は損な性分だなと思わずにはいられない。
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