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朝陽姫 (前世)
時は1×××年。舞台は今よりも昔の日本に似た戦乱の世。位の高い者には一夫多妻制が認められていた時代だ。
東西には広大な森、草原。自然に囲まれた豊かな領地で一人の子が産まれた。それは領主一条の第3妃の3子にあたる子供だった。
一条朝陽、母によってそう名付けられた。第一子第二子と、女児が続いた妃にとっては待望の男児誕生のはずだったその子。彼の母親は一風変わった人物だった。
男児の誕生を嘆いたのだ。
実は彼女は、領主の一条の事を愛しているものの、跡継ぎ争いだの権力には一切興味がなく、子供は子供らしく伸び伸びと元気に育ってくれれば十分という考えの持ち主だったのだ。
朝陽誕生の時にその場に居合わせた産婆と乳母、仲の良い侍女の三人だけが、朝陽の性別は男児だと知っているものの、女児として育てる事にしたのであった。
朝陽はすくすくと健やかに育てられ、幸運な事に女子と言ってもおかしくない綺麗な顔立ちに育っていった。一緒に遊んでいる友達は、事情を知っている仲の良い侍女の子供である双子だ。双子は朝陽と同じ月に産まれた。朗らかに三人で外遊びを楽しむ様子を見て、母である妃は安堵し、自分の決断は間違ってなかったと思うのだった。
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