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「2人とも…朝から煩い」
「「飛和おはよう」」
いつもは整っている髪に寝癖をつけながら低血圧そうに起きてきたのは、勇飛の双子の弟である飛和。
勇飛と飛和は、朝陽姫に何かあった際にすぐに駆けつける護衛という名目なので、姫の部屋のすぐ近くの離れような住まいで生活している。
今のところ何者にも狙われている様子はないし、産まれた時から女児として育てられ次期領主の座争いには元々参加していないのだから、ただただ平和な毎日だった。
日中は剣のお稽古を木刀を使って行ったり、最低限の読み書き、領地を治める事については何も知らなくて良いと、難しい政治の勉強は興味のある飛和だけが独学で学んでいた。
姫は余った時間は自由に書物を読んだり、勇飛と馬に乗ったり。そんな毎日を送っていた。
「勇飛。分かっていると思うけど、姫様は、朝陽姫は一応女性ということになってるんだから、年頃になった私たちがあまり仲良くするのはだな…」
「飛和!ひぃ様は今日も綺麗だよな!」
「??まぁ、綺麗は綺麗だけど、あんまり男が綺麗って言われるのも…姫は嫌じゃないですか?」
「はっ?………あぁ。そうか男だった」
パコーンといい音が鳴り響いた。
勇飛のバカたれが、あっ、男だったそうだったって確認する為に、隣にいた僕の股間を触って、モノがついてるか確認したのだ。
そこから今履いている履き物を脱いで勇飛の頭を盛大に殴ってやった。
さっきの鳴り響いたいい音は殴ってやった音だ。
「勇飛…たまに姫を女性と勘違いするのは分からないでもないけどさ、毎度毎度性別確認するのに股間を触る必要はないんじゃないか?」
「いてててて。さすが俺のひぃ様。容赦ないいい叩きっぷり…」
「勇飛…」
「こんのバカ勇飛が!私が男なのは分かってるだろうが!」
「だって…。ひぃ様綺麗だし、いつも私って言ってるから……分かってるんだよ?頭では分かってるんだけどついつい勘違いしちゃって…」
「普段から私って言ってなきゃ、ついうっかり素が出る時があるからだと説明してあるだろうが!バカたれ!今日は私に話しかけるな!」
「そんな!ひぃ様~!」
「自業自得」
「飛和!お前分からない言葉使ってないで兄の為にひぃ様を説得するとかなぁ…」
「たまには反省して下さい、兄さん」
ひぃ様はどすどす足音がしそうな足取りで自分の部屋に戻っていってしまった。
飛和も、やれやれまた寝るかという調子に大あくびをしている。
ひぃ様が、ひぃ様が綺麗だし、声も可愛いからつい、忘れちまうんだ!俺は…俺は……
「悪くないと思う~!!」
勇飛の声は部屋に戻った朝陽姫のもとまで響いたのだった。
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