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出逢い
目が覚めた時泣いていた。子供の頃からよく見る夢。
夢の中の俺も段々成長していく。俺の感情とリンクして、目が覚めると涙が出ている。
あれは、あれはきっと遠い記憶。俺の前世の記憶。
夢の中の俺は、愛されてるのに素直になれなかった。十分すぎるほどの愛を感じながらも、結ばれる事は叶わないと知っていたから素直になれなかった。
俺の事を愛しく思ってくれていただろう夢の中の相手。いつしか今の俺もそいつが愛しくなってしまった。夢の中、前世の出来事だとしてももう、触れあうことは叶わないのに。
高校一年になって少しばかり学校に馴れた。高校に入ったらバイトがしてみたかったから帰宅部。周りはそんなやつばかりが集まった。学校から駅までの道、大体同じ奴らと帰る。
違うクラスの○○さんって女子が可愛いだの、数学わかんねーだの特に意味のない事をだらだら喋りながら歩き、今日は本屋に寄りたいからと、途中で別れたんだ。
都会のスクランブル交差点。向かいにいるあいつは見覚えがあった。あいつ…あいつだ。毎晩俺の夢に出てくるやつ。多分俺の前世の…恋人未満だったみたいなやつ。
捕まえなきゃ。信号が変わった途端に走りだしてた。なんて話しかけるかなんて決まってなかったのに。
「おい!」
肩を掴んでこちらを向かせる。
「おい!俺亮二……って今の名前じゃわからないか、、朝陽姫!覚えてるか?お前も…夢で見てるか?」
そいつは、近くの高校の制服を着ていた。整った切れ長の目。目元と口元にある黒子。俺より少し高い位置にある顔。間違いなくこの顔だと思った。
「誰。離してくれない?急になんなの。亮二?姫?頭おかしいんじゃない」
そっか…。俺の夢だったのかな。頭おかしいやつ扱い、か…。あんなにリアルに毎日歴史映画を観ている気分だし、完全に主人公に感情移入してる夢なんだけど…。もう何年も事細かに見てるのに、前世じゃないのかな…少し、寂しい気がする…。
男が好きなわけではないけれど、あんなに想われてるのは素敵な事だと、シンプルにそう思ったんだ。
「あっ、ごめん」
考えてる間も掴みっぱなしだった肩から手を離す。
「人違いって分かったなら良かったよ。じゃぁね、ひぃ様」
「あぁ、うん。本当に悪い。すまなかった…」
人混みに紛れていった後ろ姿を見送った。あれ、前世じゃないのかなぁ…。ずっと前世だと…だから涙が出るんだと……
ん?ひぃ様?それは、前世の恋人未満だったあいつが、幼なじみが俺を呼ぶ時の呼び名だったんだ…。
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