天から降りし天使

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天から降りし天使

 私は今日から天界を離れ地上で任務を遂行する。その任務とは地上の日本にある高等学校へ潜入し、魔族を討伐するというものだ。天使としては魔族を討伐するのは当然の事。人間をなるべく離れた所から見守り手を出さない。それがラグナロク以降双方が出した結論だ。 それを気軽に破る魔族を倒すのだからむしろ喜ぶべきこと。嘘つきで自分だけが得しようと言う俗物の極みである魔族許すまじ! 「聖良先輩、おはようございます!」 「はい、おはよう」  魔族が潜んでいると言う聖マキナリ学園へ向かう並木道を歩く。朝の心地良い陽の光を浴びながら登校するのは地上の贅沢の一つだ。新陳代謝が促進される、正に命のシャワー。 「聖良君おはよう!」 「おはよう。今日も気持ちが良い天気だね」  時代は進み笑顔の子供が増えたのは本当に良い状況だ。古くから人間を見て来たが、子供が笑顔なく働き権力者たちに何もかも巻き上げられ飢えて死に、それを迎えに行く仕事が全てだった頃を思えば噓のようだ。 「聖良、おはよう」 「先生おはようございます! 良い朝ですね!」  だからこそ私は喜んで魔族を消す為地上に降りて来た。もうあんな時代を繰り返してはならないし、その切っ掛けを生み唆す魔族を生かしてはおけない。人の心の隙間に入り込み悪心を増幅させそれを愉悦とする奴らを一匹たりとも地上に存在させてはならないのだ。 「左之助っちおはよう」 「璃々依さんおはよう」  態々私の前に出た後振り返り足を止めて挨拶をしてきた。少しつり上がった目に少し高い鼻、泣き黒子が印象的なボブカットの女子生徒。挑発的な行動がとても多い。 その理由は簡単。コイツがその魔族だからだ。名前も璃々依などと隠す素振りも魅せない。だがそれで良い。少しでもこの時代の空気と陽の光を感じられただけでも良い体験をさせて貰った。 煩わしいものは抜きでさっさとコイツを抹殺して天界に帰る。だが人目に付く場所でそれは出来ないし、何より具体的な行動に移った瞬間でなければ私も悪魔と同じになってしまう。それは避けたいのだ。 「左之助っち相変わらず難しい顔してるね」 「璃々依さんは今日も楽しそうで良いね」 「何事も楽しんだ人間の勝ちだよ? じゃあね」  ニヤリと笑い去って行く魔族。難しい顔をしているのはお前が私を挑発しているからだ。楽しんだもの勝ち? 私はこの上なく楽しいよお前が罪を犯すその時まで、笑顔の多く陽の当たる世界を満喫できるのだからね。 「見ていろ魔族。必ずその息の根を止めてやる」  俺はニヤリと微笑み学校へと向かう。
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