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やっぱり、いざ書いてみると、この先これを書き続けて面白くなるような気がしない。 昨日は、なんならこの小説が大ヒットして掲示板でめちゃくちゃ語られる未来を妄想しながら気持ちよく眠れたのに、一晩明けて気持ちをリセットしてみると、いやこの小説そんな面白くないな、と思ってしまう。
話のあらすじがつまらないわけじゃない。いや、大ヒットは行き過ぎだろとは思うが。僕のテンションを下げる原因は、文章そのものだった。
僕が書いたこの文章は、ちゃんと書いておくべき情報が過不足なく描写できているんだろうか? 読んでて愉快な文章にしたつもりだったのだが……実際にこれを読んでもらったら、上っ面だけ取り繕って作品世界がスカスカに映るんじゃなかろうか……自分に酔っていて読む人のことを考えていないと思われてしまうのではないか……そういう不安が拭えない。
僕には作家として最低限必要な文章力が無いのではないか? そんな方向に思考が飛んでいく。僕は高卒だ。成績はそこそこ良かったが、読書感想文は大嫌いだった。これで作家を目指すなんて、僕の行動すべてを監視する第三者がいたとしたら、そいつは僕をなんと見るだろうか。おそらく……現実を見ない社会不適合者、今の時代には珍しくもない社会の底辺の一人だ、とか思われてしまうのでは……。
いやだめだ! こんな考えは良くない、そもそも文章力が足りなかったからって、書き続けて、インプットも欠かさずやっていけば後から鍛えられることじゃないか。大丈夫だ、大丈夫、これは諦める理由にはならない。よし。
……ここまで、僕はポメラを開いたまま何も書いていない。20分程度、何もせず、ただ開いただけで満足しようとしている。これは良くない。
こんな引きこもりの僕にも、経験則による自分だけの知恵、みたいなのはあるのだ。
「人間、良くも悪くも、慣れる」ということだ。
20歳前後という、最も活力が湧く時期を引きこもって代わり映えしない日々をずっと送っていたからこそ悟ったことだ。誇れることではないが、そこそこ説得力があると自負している。
要するに、書く準備をしても書かずにいると、書く準備をした上で書かないということに慣れてしまって、いつか全く書かなくなってしまう恐れがあるのだ。
何か書かなければならない。たった1行でも書かないよりはましだ。これはきっと、僕だけでなく、世界中の作家が同じことを言うだろう。僕は僕以外の作家に会ったことはないが。
結局、僕は昨日の続きを書くことにした。
なんとか1時間、キーボードの上に手を置き続けたが、書けた文字はたった102文字だった。
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