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吉秋Side
ボール飲み込み事件以降、ゴローは俺に甘えてくるようになった。
今もソファに座ってテレビを見る俺の膝にゴローが顎をペタンと乗せてくつろいでいる。
あの騒動の時に介抱してやったことで、少しは俺のことを頼りがいのあるアニキだと認めてくれたのだろうか。
それはいいんだが、おまえがボールなんて食べたせいで杏が旅行は延期だと言い始めてひと悶着あったんだぞ。
「なあゴロー、おまえ俺とあーちゃんのラブラブ旅行を阻止するためにわざと食ったとかじゃねえよな……?」
ゴローは聞こえないふりをして無反応だ。
武史は特別な理由なんてない、若い犬はそんなもんだと言っていたが、コイツまさか!?
「馬鹿だなおまえ、苦しかっただろ? あーちゃんには黙っといてやるからもう二度とすんじゃねえぞ。俺たちだけの秘密な」
上目遣いでちらりとこちらを見たゴローは、ぶふっと鼻を鳴らした。
年の離れた甘えん坊の弟がいたら、こんな感じだったかもしれない。
ふとそんなことを思いながらゴローの背中を撫でたのだった。
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