やっぱりゴローが中心

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 どちらが先に寝たのかはわからない。  目を覚ますと、まだしっかり吉秋の腕の中にいた。  シングルベッドに大人ふたりはぎりぎりの広さだ。数時間ずっとこの体勢だったのなら辛かっただろう。  なかなか目を覚まさない吉秋のことだから、雑にここからすり抜けても起きないだろうと思いつつ、なるべくそうっと起き上がり音を立てないように部屋を出た。  顔を洗って頭をシャキッとさせると、タイマー予約していた炊飯器を開け、炊き上がったごはんをしゃもじですくってボウルに移してゆく。  おにぎりの具はどうしようか。  冷蔵庫を確認すると、具に出来そうな食材は瓶詰のほぐし鮭、ちりめんじゃこ、そして兄お手製のもやしのナムルぐらいだ。  病院にゴローの様子を見に行くついでに兄に朝食を届けようと思い立った。  緊急のことがあれば連絡すると言われていたけれど、結局何もないまま朝を迎えた。  兄も仮眠ぐらいはとったのだろうか、それともこういう時にはほとんど寝ずの看病みたいになるのだろうか。  ふじた動物病院の2階には寝泊まりできる部屋があって、ベッドだけでなく簡易シャワーやキッチンも備わっていると聞いたことがある。  改めて兄の獣医師という職業のことをあれこれ考えながら三種類のおにぎりを完成させ、わたしたちの朝食用にししゃもを焼いてお味噌汁が完成したところで吉秋を起こしに2階へ向かった。 「よっちゃん、起きて」 「んー……」 「よっちゃん、ゴローのお見舞いに行こうよ」 「んんー……」  相変わらず朝に弱い様子に笑いながら、寝ている吉秋に覆いかぶさるように頬にちゅっと唇を寄せると、ようやく吉秋が目を開けた。 「あーちゃん、おはよ」  腕が伸びてきてぎゅうっと抱きしめられる。 「……俺、あーちゃんと結婚したんだっけ?」  どんな夢見てたのよっ!?
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