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祖母に会いに
全員がお正月休みに入るのを待って、吉秋の所有するミニバンに4人で乗り込んで祖母の家へと向かっている。
4人とは、わたしと吉秋、そして兄と玲子さんだ。
兄が、玲子さんの紹介は父も一緒のほうがいいだろうから年末に祖母の家に行っていいかと提案し、これを了承した母は吉秋が挨拶に来た翌々日に上機嫌で祖母の元へと帰って行った。
吉秋の口の上手さにも舌を巻いたが、兄も相当だ。
吉秋を締め上げて聞き出したプランBを成功させるためには、祖母に会わなければならない。
それならばわたしたちも結婚の挨拶をしたいと兄に乗っかる形で不自然さを感じさせることなく4人で祖母宅へ押しかけることとなり、その前提条件をクリアしたわけだ。
「吉秋、粗相のないようにね」
「しっかりアピールしてくるんだぞ」
そう言って吉秋の両親は、わたしたちを快く送り出してくれた。
吉秋の祖父母は両方ともすでに他界していることもあり、宝田家のお正月の過ごし方は例年家族水入らずでのんびり寝正月というスタイルだ。
今年は吉秋をわたしたちが連れて行ってしまうことになるため申し訳なく思っていたけれど、ゴローのカノジョ、ココちゃんご一家が遊びに来ることになっているとかで、おばさんはどちらかというとその準備でソワソワしている様子だ。
4人で運転を交代しながら祖母の家へと向かう。
玲子さんの実家は「車を運転しなきゃ生活していけない」土地柄のようで運転は手慣れたもの、兄も大学からずっとそちらで暮らしていたために同じく運転が上手だ。
わたしだって吉秋に教えてもらって運転の練習をしていたのだ。任せて! と自信満々でハンドルを握ったのに、すぐに兄の低い声が響いた。
「怖い、代われ」
わたしがハンドルを握る度に、兄が代われ代われとうるさい。
「武史、安心しろ。多少こすっても自動車保険でカバーできるから」
「違う! 車の心配をしているんじゃなくて、命の心配をしているんだ!」
兄が怒ると玲子さんが楽しそうに笑う。
「タケちゃんって神経質よね」
「これでもあーちゃん、随分上手くなったんだぜ? 最初の頃なんて、どんだけヒヤヒヤしたか」
吉秋も笑っている。
「吉秋、今おまえのことを猛烈に尊敬している。これからも杏のことはお前に任せた。……ってことで、運転代われ!」
車内に笑い声が響き、楽しい雰囲気のまま祖母の家に到着したのだった。

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