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先生には妹がいて、ある日のこと、干していた洗濯物を取り込んだとき、
ハチが潜んでいて、びっくりした、と、彼女は笑った。
東京学芸大学でのことや、富士宮での高校生活のこと、なぜ自分が教師を目指したかについて話を聞かせてくれた。
先生の話す言葉が、空気を震わせ、鼓膜に伝わり、神経を辿って、脳に送り込まれ、
大脳新皮質と辺縁系の狭間にしっとりと染み込んでいくような感覚を僕は感じていた。
そういう細かい表現をすると変態っぽいが、仕方がない。
エンドルフィンなのか、セロトニンなのかどうかはわからないけれど、
とにかく、一緒にいる時間が心地よかったのだ。
オキシトシンなのかもしれない。
「小学校の先生になりたかったんだ」
小テストの時間に先生は巡回しながら、僕の机のそばでそう言った。
指を揃えた右手が机の上の用紙の上をなぞった。
僕が、テストを適当に終えて裏返しにして、落書きをしていたのを見逃さなかったのだ。
落書きは『山月記』を絵に書いたものだった。
中島敦の小説で、虎と人の融合を書いたイラストだった。
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