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言葉にするのはとても難しいけれど、それは、一般的には、心地よいものではない。
女の匂い、といえば、香水やシャンプーを思い浮かべると思う。
だけど、母親から発している匂いは、そういった綺麗な心地よい匂いではない。
とても憎々しくて、リアリティのある、なにか運命めいたものを感じさせる匂いだった。
そういった匂いの記憶と、二十三歳の未婚の女の国語教師の下腹部から出される匂いが一致して、
僕は「溺れたい」と思った。
その太ももの間に顔をうずめて、匂いを存分に感じて、髪の毛をかきあげてもらって、
「大丈夫、大丈夫」と言って欲しかった。
でももちろん、
そんなことはしない。
適当な会話をして、17歳の僕は、職員室を去った。
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2015年11月19日。
そんな高校時代から十年以上過ぎて三十歳を超えた僕は、
ぬか床を作った。
捨て漬のために白菜を埋めてある。
糠の匂いを嗅いで、遠い昔の「匂い」のことを思い出したのだ。
どこか懐かしく、
安らげる匂い。
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