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髪の長い小柄な老人が、地面に座り込んでいる。
眼窩は落ち込み、眉毛が長く、水分を失った毛という毛は白く肌は浅黒い。
腰に巻き付けている布切れは、おそらく衣服のつもりなのだろう。しかしながらそれは、必要最低限の役割しかもたない心細いものだった。
老人に気にしている様子はない。
いつからそこにいたのか、そして彼は何者なのか。
真実を知る者はひとりもいない。
気が付いたら日常に溶け込んでいた、そうとしか表現できないほど、老人は突如そこに現れた。
晴れの日も雨の日も雪の日も、彼は同じ場所にひとり座り続けている。
ある時、この世の不条理を経験したことのない、全能感にまみれた年代の少年が鼻をつまみながら老人にこう尋ねた。
「ねえ、おじいさん。おじいさんは毎日毎日ここで何をしているの?」
天気の良い日、和やかな陽気に包まれた気持ちの良い朝のことである。
悪意の類がいっさいない、正真正銘純粋無垢で真っ直ぐな質問。
それは、無言の嘲笑を帯びた好奇心に晒され続けてきた老人にとって、懐かしくもどこかくすぐったい暖かさであった。
厚い髭に覆われた口を小さく開き、
「この星に空いた穴を塞いでいるのさ」
彼はそう答えた。
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