最愛番外 君と居るということ

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体は検査してもどこも異常がなく、医師は引き止めようにも引き止める術がなかった。 家に帰る時も、大が付き添ってくれて。 それから大はずっとあたしの家にいる。 下着も服も、幾つか家に置いてあったから、さして不便はなかった。 大は、食事とトイレ以外は、ずっとベッドであたしを抱き締めていた。 黙って、静かに。 だから小説が書けないと気づいたのは、大がシャワーを浴びている時だった。 いつもお風呂は2人で入っていたけれど、深夜、悪い夢でもみたのだろう。びっしょり汗をかいた大が、「ちょっと入ってくる」とひとりでシャワーに行った時。 あたしは小説をこんな長い間書かないなんてことはなかったから、指が自然とキーボードを求めた。 文字が打ちたい。 強い願望があたしを襲った。 あたしは急いでPCを立ち上げて、文字を打とうとした。 ところが。 何も浮かばない。 言葉が浮かばない。 なんでもいいのに、打ち込む言葉が見当たらない。 仕方なく、「大」と打った。 次の言葉を打とうとしても、何も浮かばない。 こんなことある? 普通に思考できて、言葉だって話せるのに、文字だけが何も浮かばない。
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