6人が本棚に入れています
本棚に追加
そう言った。
大がいてくれることが有り難かった。心強かった。
と、カフェに向かう途中の下り坂、大が言った。
「俺、休学しようと思う」
「は?何言ってるの、大」
「千弥子には今サポートが必要だ。そうしてそれは、俺でなくちゃダメだ」
ズキン……。
胸の奥が痛んだ。軋んだ。
大のお荷物にはなりたくなかった。
それだけじゃない。
書けなくなった理由。それも、大が関係しているんじゃ、と思っていたあたしは、大きく頭を振った。
「大は大学休学なんかしちゃだめよ。大事な将来が滅茶苦茶になるわ。就職だって不利になるし」
「最悪実家の呉服屋継げばいいし。そうでなくたって、休学するのを不利にはさせない」
俺にはわからない将来なんかよりも、今千弥子の側にいることの方がずっと大事なんだ。
そんな風に言って、労わるようにまた髪を撫でた。
「ダメよ、そんなの」
言ってもきかない性格をわかっていて。
あたしは何度もダメを繰り返した。
無駄とわかっていて。
意味なんかないのに。
※※※
空調の効いた涼しいカフェで、あたしはPCの前に座っていた。
最初のコメントを投稿しよう!