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あたしにはもう文書は書けない。
小説は、書けない。
茫然と、画面を眺め続けた。
大が背後で見ていることも、気づかなかった。
そうして何時間も、あたしはそうしていた。
絶望が降りてくる。
シャリン、シャリン、鈴を鳴らして絶望が、ゆっくりゆっくり降りてくる。
鈴の音の雨の中、あたしはただ立ち尽くしていた。
※※※
「どういう意味?」
大が家に帰ってベッドの中、聞いてきた。
「あたしは愛されちゃいけない、って。どういう意味?」
あたしは迷った。正直に話すべきか。誤魔化すべきか。
でも鋭い大のことだ。きっとなんとなくでも気づいているのだ。
つまり、あたしが小説を書けないことに、自分が関係していること。
その証拠に、あの文字を見てからずっとソワソワしていた。
『愛されちゃいけない』なら、あたしを愛してくれている大はどうするべきなのか、考えあぐねているのだろう。
あたしは、正直に話すことにした。
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