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しかし、朝はやはり気だるい。
昨日のお酒が残っているわけではないが、やはり気だるい。
それは僕が救世主だろうと何だろうと、絶対的に気だるい。
――朝なんて全部消し飛べばいいのに。
そんな感じに惚けて考えていると、脳の反射はやはり鈍り、電車に乗り込むタイミングが少し遅れてしまう。
我先にと乗り込む雑兵どもに先を越され、僕は到着した電車に、一番後ろから乗り込むことになってしまった。
少し、嫌だった。
基本的には満員の電車なので、必然的に僕は電車の降車口付近から動けない。
電車の扉が閉まる。
満員電車の雑多の中では、身動きは取れない。
出入口の扉の、ガラス部分に貼られた広告のシールの中で、少し前に解散した男性アイドルグループの中の1人が豆乳を持って笑っている。
僕は危うく彼とキスしてしまいそうなくらい、内側からの圧力に押されていた。
意に反したロマンスも嫌ではあるが、降車口付近に乗ると、駅に到着する度に降りる人達のために一度電車を降りて、降り切ったあとにまた乗り込む必要がある。とにかくそれが煩わしい。
僕が降りる駅までは10駅もあるので、できるだけ電車の奥へと進んでおきたかったところだが、しかし、それはもうボヤボヤしていた僕が悪いと諦めるしかなかった。
この救世主たる僕がいちいち出口へ向かうスペースを開けてあげることになるとは、この乗客達はなんて贅沢なのだと、心の中でぼやいていた。
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