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――ここが、スズカゼ・カンパニー……。
それから、二年後。
姉、鳥海みらは二十八歳。弟が勤務していた、スズカゼ・カンパニーのビルの前にいた。今日から自分は派遣社員として、ここで派遣社員として勤務することになっている。両親が離婚したせで苗字が違う天城りくの姉である、という事実を隠して。
自宅で、脱法ドラッグを過剰摂取したせいで急性薬物中毒となって死んだ弟。自宅に他にも薬が残っていたこと、注射器に弟の指紋しか見つからなかったことなどから、警察は彼を自殺で処理してしまった。
だが、そもそもの話、りくが何故ドラッグなんか持っていたのか?という問題が残っている。
直前まで連絡を取り合っていた自分は知っているのだ。彼に、不審な様子はなかった。半年前に顔を合わせた時も、仕事が忙しいと言っているくらいで特におかしな様子はなかったのである。ましてや、心優しい爽やかな人気者様、を地で行くようなキャラクターだった彼だ。脱法ドラッグを扱うような半グレ組織と繋がりがあったなんて到底信じられないのである。
――もし仮に、本当に自殺だとしても。弟が自殺するなら、それには絶対理由があるはずだ。
彼が何故、死んだのか。
誰かに殺されたのか。それとも、誰かに死にたいほどに追い詰められて自殺を選んだのか。
そして、薬は一体どこから持ち出されたものであったのか――。
みらはその謎を解くために、此処にいる。彼が勤めていた会社、このスズカゼ・カンパニーに謎の答え、少なくともヒントがあるはずだと信じて。というのも、最後にりくと話した時に、彼が繰り返し話題に出してきた人物が此処にいるのである。
それが、この会社の営業部のエース、霧島流。
今はどこまでも仕事に打ち込みたい、そう語っていた彼の現在の交流関係は、時々会う大学時代の友人を除けば殆どが会社の関係者に限定されていた。話題に出てきたのも、尊敬できる先輩と語っていた流を含めた会社関係者ばかりであったのである。
彼等が何も知らないとは、みらにはどうしても思えなかったのだ。
――警察なんかアテにできない。りくを死に追いやった奴が誰なのか、私が自分の手で見つけてやる……!
実戦空手を習い、自分で自分の身を守れるくらいにはなった。
この二年、探偵も使って他の情報は全て調べ尽くした。
あとはこの会社に乗り込んで、みら自身で決着をつけるまで。
――見ていろ。必ず私が、相応しい罰を下してやるからな……!
弟を殺した犯人を見つけたら、その時は自ら裁いてやると決めていた。
それだけを糧に、弟が死んでからの二年間――自分は日々を生きてきたのだから。
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