糖分不足な僕らの事情。

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 願わくば、目覚めの瞬間は仰向けでありたい。夜中にどれだけの寝返りを打とうが、終わりよければ全てよし。なんだか正しく眠れた気になれる。  常々そう思っているのに、起きたら見事にうつ伏せだった。枕とシーツの間に埋まった顔は強引に左へと捻れ、右の腕はベッドからはみ出してだらりと垂れている。顔のすぐ目の前にはスマホを握りしめた左手。  まるで他殺死体じゃん、そういやさっき殺されたかも。と寝ぼけて脳がカオスしたあと、急に我に返り、ガバッと飛び起きた。  今、一体何時なのか。今日は絶対になにがなんでも是が非でも、五時半に起きなきゃならない。寝坊は万死に値する。文字通り首が飛ぶ。大慌てでスマホを光らせれば、ロック画面にでかでかと表示された『4:29』の文字。ああよかった、と本気で胸を撫で下ろした。  しかし、落ち着いてみればなんだか釈然としない。よく考えたらあと一時間は眠れたのだ。今さら二度寝する勇気はない、でも不意の目覚めがもう一時間早けりゃ迷わず寝た。  早起きは三文の得と言うけど大損じゃん、と尖らせた口が勝手に開いて、ふああああと大欠伸を吐き出す。えらい眠い。そりゃそうだ、まだ夜も明けていないし。あと首が痛い。  とか考えながら窓のカーテンを少しめくってみれば、隙間から射し込んだのは薄いオレンジ色。残念ながら、五月末の四時半はもう朝らしい。朝じゃしょうがない、と伸びをしたらまた欠伸が飛び出た。  さて、絶対寝る訳にはいかない一時間、なにをして過ごそうか。
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