糖分不足な僕らの事情。

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 まあでも、どこに配属されたって結局同じ。残業残業すぐ休日出勤すぐ出張すぐ飛行機だ。でかい商社なんて勤めるもんじゃない。入社八年目にして感じるメリットは収入面くらい。でも使う時間がないから、老後への備えだけが早くも万全になりつつある。  あとよかったことを強いて言えば、今の彼女と出会えたこと。だけど──。  最近デートする時間なんてもちろんない。せめて毎日LINEくらいはと思っても、疲労困憊で『明日からオーストラリア』の『あし』すら送れないまま力尽きる始末だ。  この間のゴールデンウィークも互いの仕事に邪魔されてゆっくりできず、そのあと約束した夕飯も俺の急な来客でおじゃん。土日はどっちかが必ず休日出勤。先週に至っては、彼女の方が上海に出張で日本不在。  そう、俺だけの問題ならともかく、同じ会社に勤める彼女もやっぱり社畜しているから困りものである。そういや昨日、久々に顔を合わせた気がする。⋯⋯会社のエレベーターで。  けど話なんてしなかった。当然互いに仕事中、俺はお喋りな部下と一緒だったから仕方ない。うん、最近会話した記憶が殆どない。  本人の声もまともに聞けないまま、「彼女、来年あたり課長に昇進じゃん?」なんて噂だけを耳にする。彼女は食品流通部のエース様だ。  まあでも、互いに忙しきは良きことかな。こんなご時世だし大変ありがたい、多分。  ふああああ、と再び大きな欠伸をしてから、俺はベッドを抜け出した。苦いコーヒーでも飲んで目を覚まそうと、あんぐり口を開けたトランクを避けてキッチンへ向かう。
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