救っておくれ

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『今、お仕事中? お昼休み? ごめんなさいね、こんな時間に』 「いえ、大丈夫ですよ。どうかしました?」 『その…亜紀と最近会った?』 「はい、ついこの前に一緒に出掛けましたけど…」 推しの作家のサイン会に参加してホクホクのえびす顔を思い出していると、ふと、電話口の向こうで口ごもる気配がした。次いで神妙な声が聞こえてきた。 『その時、亜紀の様子どうだった? 変なとこなかったかな?』 「いや…いつも通りだったと思います。あの、亜紀がどうかしたんですか?」 『…亜紀と連絡がつかないの』 一切の音が聞こえなくなった。あんなに長閑だと感じていた風の音も、葉が擦れる音も全く聞こえなくなった。 『仕事先から連絡があってね。昨日から来てないって。わたしからも電話してみたんだけど、電源が入ってないみたいで。明日、あの子の家に行ってみようと思うんだけど、その前に仲の良い×××××ちゃんにも聞いておこうと思って…。あの子ももう成人した大人なんだし、普段は元気だからわざわざ下宿先にまで行くのは過保護なのかもしれないけど…、でも、家は前に色々あったでしょ? だから心配で…』 無音の中で、あいつのお母さんの声だけが聞こえてくる。 私は林で立ち尽くし、さっき聞いた社長とひつじさんの言葉を思い出していた。 ーーー最近多いですね。行方不明になる方の捜索依頼…。 ーーーこの地域で最近になっていきなり行方がわからなくなる人間が増えたらしい。
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