救っておくれ

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仕事から自宅に帰ってきた私は、夕飯もそこそこに寝る仕度に取り掛かった。 あっという間に後はベッドに滑り込むだけの段階にすると、テーブルに置いていた文庫本を手に取る。 先日のサイン会帰りに、おすすめはこれだから買う前に読んでみろ、と亜紀が貸してくれた本だ。 本を枕元に置き横になる。 単に本に意識を集中させるよりも、完全に意識を無くす眠りの中の方が見付けやすいのだ。 私が掛けたあいつの番号の通話口から聞こえてきたのは、お母さんの言った通り、電源が入っていないというアナウンスだった。 事件か、事故か。あいつの身に何かあったのか。 それでもまだ確証があるわけじゃない。 そう思う度に、社長たちの会話が否定するかのように蘇る。 胸騒ぎがした。 枕元の本を見詰め、目を閉じる。 この本で持ち主の亜紀に辿り着けるかは私にもわからない。 でもあいつを探す手掛かりのひとつでも見付かる可能性があるなら、私にやらない選択肢はなかった。
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