救っておくれ

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ふと気付いて、周りを見渡す。 霧の掛かった参道に突っ立っていた。 「ここ…」 見覚えのある風景だ。 どうやらもはや夢の中にいるようだ。まあ私おやすみ3秒だからなあ。それにしてもまたこの夢をみることになるとは。 何処からともなく聞こえてくる囁き声と鈴の音を聞き流しながら、参道の奥を行く。 確かこの先を真っ直ぐ行けば、 「あった…」 ねじ曲がった鳥居が霧の中にそびえ立っていた。 やっぱり不自然だ。薄ら寒い感覚がぬぐえない。 視界に何かが動いた気がして、上を見上げていた視線を戻し、次の瞬間には口を開いていた。 「亜紀!」 鳥居を越えた向こう、ずっと向こうに参道を奥に進んでいく背中が見えた。すぐに分かった、あいつだ。遠いけど間違いない。 どんなに呼びかけて行くなと言っても振り返らず、背中はどんどん遠ざかっていく。見えなくなっていく。 関わるな、と忠告してきた社長の言葉を思い出す。 ーーーなに、バケモンみたいな声出すじゃん。 学生時代、廊下で学校に棲み付いた怪異におどかされて奇声をあげ、周りから奇異なものを見るような目を向けられた時、私の奇声がツボに入って笑いながら声を掛けてくれたのがあいつだった。 社長、ごめん。 「私、あいつを探しに行く」 独り言ちて、私はあんなに近寄りたくないと思った鳥居をくぐり抜けた。途端、囁き声と鈴の音が消え失せる。 やばいのはわかっている。全てを振り切り、私は霧の中に消えていった背中を追った。
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