救っておくれ

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※ ※ ※ 上も下もわからない。 真っ暗な闇の中をただ歩いていた。 自分が“歩いている“と気付いた時には、石畳の一本道が現れた。道の両端には石燈籠が立ち並び、闇が少し払われ、代わりに霧が立ち込め始めた。 ぼんやりとした燈籠の灯りを眺めながら思う。 これは夢だな。 はっきりとわかった。 長年の経験でこちとら瞬時に判断できるんだ。 さて、私がみる夢はふたつある。自分の意思が介在するか、しないか。 立ち止まってみる。 手を上げて、手のひらを閉じて開くを繰り返す。 うん、今回の夢は、私の意思があるやつだ。 わかったはいいんだけど、 「問題はどうやって目を覚ますのかだよなあ〜…」 膝に手をついて項垂れる。 簡単に目覚められたらいいんだけど、この感じ、一筋縄じゃいかなさそうだぞ。 シャン、シャン… 鈴の音が聞こえて、上体を戻す。 頭の奥に響くような鈴の音が何処からか聞こえてくる。その音に紛れるようにして、囁きあう声が聞こえてきた。何を話しているかはわからない。けれど、私のことを見て囁きあっているのはわかった。 そりゃあ、私は此処では異邦人なわけだし、物珍しいわな。 変に興味を持たれても困る。長居は無用。早いとこ目を覚まそう。 さて、この一本道の参道、後ろは墨を垂らしたような果てない闇が広がるばかり。前に進むしかないか。 ようやく私は前に向け脚を踏み出した。 シャンシャン、うるさい参道を歩き通す。永遠か? と思う程の距離を進み続けると、前方にぼんやり影が見えた。
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