救っておくれ

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歩を進め、影の全容を確かめた私は「おお…」とも「うわぁ…」ともつかない変な感嘆の声を漏らした。 大きな鳥居だ。 職場の麓にある鳥居と遜色ない。 だが、その佇まいはまったく異なっていた。 鳥居の柱がねじ曲がっている。ゴムのようにぐにゃりとだ。 す、と背中を冷たいものが落ちる感覚がした。あまり近寄りたくない。 他に道はないものか、と辺りを見渡して動く影に気付いた。はっと息を呑む。鳥居を越えた随分向こう側に動く影がある。 霧が邪魔で良く見えない。喧嘩売ってんのかって程に目を凝らすと、それがようやくひとの後ろ姿だとわかった。 誰かが鳥居の奥へ歩いていっている。男か女かはわからない。 少しずつ少しずつ、けど着実に遠ざかっていく背中を見て、思わず開きかけた口を寸でで閉ざした。  「…………」 声を掛ければ、縁が生まれる。 踏み出しかけていた脚を元に戻し、鳥居に背を向けた。 ねじれた鳥居の向こうを進んでいったあの誰かが気にならないと言ったら嘘になる。 でも、あっちに行ってはいけない。 これは直感だ。 未練を振り切り、私は歩いてきた参道を引き返し始め、ーーースマホのアラームに叩き起こされた。
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