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「お疲れ様です。…また同じご依頼ですか?」
「ああ、そうだ」
「最近多いですね。行方不明になる方の捜索依頼…」
「行方不明者の捜索?」
思わず声を出していた。先日、友人から聞いた作家が行方不明になったという話が記憶に新しかったからつい反応してしまった。
書状を手にしている社長と、コーヒーを載せていただろうお盆を腕にしているひつじさんが虚を衝かれたように私を見た。今にも意識を失いそうになっている社畜がいきなり大声を出したら驚きもするだろう。私はふたりの反応を気にせず執務机に近寄った。
「報告書は出来たのか?」
「いや…えっと…、も、もうすぐ出来ます! それより、それどんな依頼なんですか?」
暗に何休憩してんだてめえ、と言ってくる社長にもめげずに問いかける。何を言っても無駄と悟ったか社長は溜め息を吐くと、小さな手にしていた書状をデスク上に置いた。
「この地域で最近になっていきなり行方がわからなくなる人間が増えたらしい。その捜索依頼だ」
「最近いきなり…。依頼は受けるんですか?」
「受けない。ここは興信所でも警察でもないからな」
「そうですか…」
興信所や警察に頼って、おそらくそれでも見付からなかったからここを頼ってきた依頼主もいるんだろうな。この会社の存在を見付けて依頼してきたくらいだ。きっと藁にもすがる思いなのだろう。
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