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親友・芙友の忠告と…紫陽の存在
はーっ、くたくた。
哲哉さんに会えておしゃべりして、おいしいご飯いただいて…
楽しかったし癒されたけど、今週は残業続きだったから、哲哉さんのお部屋には行かずに帰ってこれて、助かったかも。
哲哉さんのとこ行ったら、必然的に…そうなるもんね。
正直、今週はもう、そこまでの体力は残ってない。
周りの話聞いたり、雑誌に寄せられる体験談を読んでると、みんなすごいんだよね…夜の姿。
毎晩何度も、なんていう話を聞くと、ツワモノ!!って思っちゃう。
けど哲哉さん…半月ぶりに会えたし、ほんとは期待っていうか、そういうつもりで誘ったんだよね、たぶん。
おことばに甘えたけど、よかったのかな。
って思ってたら、哲哉さんからメッセージ。
お風呂でゆっくりあったまって、寝るんだよ、って。
哲哉さん、優しいなぁ。
…でもね、同僚で気の合う芙友は、そんなに期間が空いてオトコが平気なわけない、って言うの。
30代は20代よりも精力落ちるったってそんなの若干だし、人によるし、哲哉さんの顔立ちからして半月もないのはなんかある、って。
そういうの、顔と関係あるの?って聞いたら、どう見たって強そうでしょ、あれで薄いとか信じらんないわ、って返ってきた。
<璃莉~、お疲れさま!デートどうだった?なんて聞くだけ野暮か、今頃彼氏んとこよね>
芙友からメッセージ来てる。
<疲れた顔してるね、よく寝なさいって、ご飯だけで送ってくれたの、もうあたしんち>
返信したら、ソッコーで芙友から着信。
「もしかして、璃莉ひとり?」
「うん、ひとりだけど、どうしたの」
「どうしたのじゃないわよ、なに呑気なこと言ってんの璃莉」
あたし、芙友に怒られてる?
「呑気、って…哲哉さんが、疲れてるだろうからって気遣ってくれて」
言いかけたら
「あのねぇ〜、璃莉?」
呆れたような口調。
「なぁに」
「アンタねぇ…浮気されても知らないわよ?」
え?哲哉さんが浮気?どうして?
「芙友、なんでそうなるの?」
「もーぉー、あんだけいろんな体験談読んでて、わかんないの?」
そんなこと言ったって、あの人たちと哲哉さんは別でしょ。
「オトコなんてね、みんな一緒!」
「…どういうこと?」
「なにを処女みたいなこと言ってんのよ、半月寝てないんでしょ?足りるわけないってこと!」
「…あたしがいけないの?でも哲哉さん」
「ほんとに璃莉が心配でも、半月もシないなんて有り得なくない?せめて一緒にいるとか…ていうか、どれくらいなの?」
「…どれくらい、って?」
「もー焦れったいな、週何回?って聞いてんの」
そんなこと聞くの?
でも…どれくらいだろ。
「週末とか…でも生理だったりして、そんなに…」
「ねぇ璃莉」
芙友の声色が変わる。
「他にいない?ほんっとに、璃莉だけ?」
…他に?…え?
「確かめた方がいいよ、ほんとに璃莉だけだと思うし思いたいけど、あんなにカッコいい彼氏だよ?引く手あまたでしょ」
「…哲哉さんのとこ、行ってみた方がいいかな」
「そうね、行くなら連絡なしで。髪の毛とか落ちてないかよく見といで」
「…うん」
はぁ。哲哉さんを疑うようなことしなくちゃなんないの?
「あ、それとさ、璃莉」
「ん?」
「だいじょーぶ?」
「なんのこと?」
「今日のバイトくん!璃莉、目がハートになってたよぉ」
えええええ?!
「なによそれー」
「自覚ないの?困ったもんね、璃莉も」
今度は芙友、笑ってる。
「…あたし、そんなだった?」
「ほんっと、璃莉は素直すぎ、ぜーんぶバレバレ」
そんなぁ…恥ずかしい。
「彼の名前、覚えてる?」
「わかんない、ていうかどの子もわかんないよ、たくさんいたし」
「気になるなら教えてあげてもいいけどー?」
なによ、勿体つけちゃって。
「いいわよ別に」
とは言ったものの、あの衝撃…思い出しちゃう。
「覚えといた方がいいでしょ、バイトくんたちにはお世話になるんだし。名簿送っとくね、じゃ、明日はしっかりね」
話し終えると、璃莉からバイトくんたちの名前が20人分送られてきた。
衝撃を受けた、あのとき。
あの子にすっかり惹きつけられて、なんの音もしてなくて、名前なんて聞こえてなかったはずなのに。
芙友から送られてきた20人分の名前の中から
“ 水沢紫陽 ”
この文字だけが目に飛び込んできた。
もしかして、これ、あの子の名前…?
「みずさわ、しよう?なんて読むんだろ」
声にしたらドキドキしてきて、あの子の顔が浮かんでくる。
この名前なのかどうかわからないのに。
それより。
あたしには、哲哉さんがいるのに。
どうしてあたし、ドキドキしてるの?
どうして、あの子の名前(かどうかわからないけど)にこんなに反応してるの…?
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