夢の世界

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 小物選びには、思っていた以上に時間を費やしてしまった。  アスカはいくつもの店を巡り、本人たちの希望を聞いたりしながら、様々な品を見て回った。  ぬいぐるみや香水、置物に時計。いくつもの店を回るにつれて、身につけられるものがいいだろうということになった。  シオンにカエルの着ぐるみを差し出され、頭を抱えていたりもしたが。  もっと小さいものがいいのではということになり、「じゃあこれはまたの機会にしようかな」と引き下がったシオンを見て、またの機会に着るつもりなのかと苦笑いをした。  道中の何気ない会話も、アスカには楽しくて仕方がなかった。  そうしているうちに、時間はどんどん過ぎていき……。  「……うん、これとかどう?」  アスカはしずく型の宝石に細い銀の鎖を通した、繊細な作りのペンダントを両手に載せた。全て形は同じだが、一つ一つ色が異なっている。  「いいですね。シンプルな作りですが、素材の美しさを生かした素敵な品だと思います」  「けどこれ、全部同じ形だろ? いいのか?」  「うん。あえてそうしたの。だって、その……」  アスカは一旦言葉を切った。胸の奥底に秘めていた想いを口にするのは、とても度胸がいるものだ。  もしかしたら、自分の一方的な想いに過ぎないのかもしれない。そんなつもりはなかったと、嫌な顔をされてしまうかもしれない。  それでも、アスカは信じてみたかった。両親の望みに応えられない、駄目な自分を快く受け入れてくれたシオンたちを。  「みんなで繋がってるっていうか……一つになれる気ががするから。……みんなとはまだ会ったばかりだけど、私のやりたいことをさせてくれて、優しくしてくれて……受け入れてくれたのが嬉しくて。だから……と、友達になってくれるかな?」  アスカはたどたどしく想いを口にする。シオンたちがどんな顔をしているのか、怖くて顔をあげることができない。  自分が舞い上がっていただけだったらどうしようと不安になっていると、温かく大きな手が緑色のペンダントを手に取った。  「俺は、最初からそのつもりだよ」  ペンダントを目の前に掲げ、クレイが歯を見せて笑いかけた。それに続いて、ミルも白いペンダントに触れる。  「私もです。改めて、よろしくお願いしますね」  「僕も。君と出会えて、本当によかった」  シオンが青い石を握り、アスカの手元に赤い石が残った。ペンダントを握りしめたアスカの目に、じわりと温かい雫がにじみ出る。  「ご、ごめん。何か変なこと言った?」  「ううん、違うの。私、嬉しくて……みんな、本当にありがとう」  目元に溜まった液体を拭い、アスカはペンダントを首にかけた。胸元を彩る赤い宝石が、太陽の光を受けて鮮やかな光を帯びる。  「じゃ、次はどこ行く?」  首から垂らしたペンダントをつまみながら、クレイはアスカをちらりと見た。  「わ、私?」  「当たり前だろ? アスカはお客様なんだから、やりたいこと正直に言っていいんだぞ」  クレイに促され、アスカは考える。同年代の子たちが当たり前のようにできて、自分はしたことのないことをしてみたい。そう思って、真っ先に思い浮かんだのは……。  「じゃあ……せっかくだから、何か食べてみたい、かも」  「それなら、良さそうなお店を知っていますよ。アスカと同じくらいの年頃の子に大人気なんですって」  「じゃ、そこに行くか!」  「あ、ちょっと!」  言い終わるより先に先陣を切って駆け出したクレイを、ミルが追う。  その瞬間、二人の被っていたフードがはらりと落ちた。  淡い金色の短髪と眼鏡が印象的で、どことなく陽気そうな表情のクレイ。  色白で鼻筋の整った、凛々しくも美しい顔立ちのミル。  想像以上に整った顔立ちの二人に、アスカは思わず魅入りそうになる。  ふと、そもそもどうして顔を隠していたのかという疑問が浮かぶ。アスカはシオンに尋ねようとしたが、シオンはなぜか呆けたように固まってしまっていた。  「シオン?」  アスカの呼びかけに、シオンはぴくりと体を震わせる。  「ごめん、何でもないよ。行こうか」    駆け出したシオンを、アスカは慌てて追いかけた。
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