第一章 孤独な少女と夢幻の騎士

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第一章 孤独な少女と夢幻の騎士

 ガタガタと椅子が動く音で、アスカは目を開いた。  慌てて立ち上がろうとして、(もつ)れた足が椅子にぶつかる。意図せず大きな音を響かせてしまい、数人の視線が針のようにアスカへ突き刺さった。  アスカは身を縮こませながら、「礼」というセリフに合わせて体を倒す。教師が去り、クラスメイトたちがあちこちで雑談を始める中、アスカは詰めていた息を吐き再び椅子に座った。  ほんの少し出遅れただけでも、否応なしに注目を浴びる。宿題や教科書を忘れたときや、体育で情けない結果を出してしまったとき、普段なら自分に見向きもしない人たちが一斉にこちらへ注目する。  そしていずれは、「何をやっても駄目な子」と認識されていくのだ。例えば、今のアスカのように。  「光嶋(みつしま)さん」  不意に呼びかけられ、アスカはびくりと体を震わせる。長い黒髪を一つに束ねた少女が、険しい顔でアスカを見下ろしていた。  「スローガンの案、提出して」  「あ、えっと……」  「忘れたの?」  きつい物言いに怯えつつ、アスカは小さく頷いた。昨日、帰る前に小さな紙を配られたことを今になって思い出す。クラスのスローガンの案を一つ書いてくるよう言われていたのだが、アスカは宿題に気を取られて今の今まですっかり忘れてしまっていた。  少女は「そう」とだけ言って立ち去った。遠ざかる足音が、アスカを惨めな気持ちにさせる。
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