心の味は

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 「……アスカの料理も食べてみたいな」  賑やかな大人たちの傍らで、シオンがグラスを揺らしながら小声で呟いた。アスカは少しだけ口に含んでいた水を飲み込み、シオンの顔を覗き見る。  食事を必要としないシオンたちはともかく、人間であるアスカは食べないわけにはいかない。そのため、普段は簡単なものを食べる分だけ、慣れない手つきでなんとか作って凌いできた。  中学生ならそれなりに料理ができてもおかしくはないはずだが、アスカは今まで家庭科の調理実習くらいでしか料理をしたことがない。昔から興味はあっても、両親はアスカが台所に立つことを頑として認めてくれなかったのだ。  「えっと、別にいいけど、あんまり良いものは作れないよ? 私、あんまり料理したことないし」  弱気なアスカに気づき、駿がカウンター越しにアスカの前へと進み出る。駿はカウンターに手をついて、アスカを見ながら微かに笑い声をこぼした。  「じゃあ、アシスタントが必要かもな。俺で良ければ手伝うぞ?」  「え、でも……」  突然の誘いにアスカは戸惑う。まだ知り合ったばかりなのに、いきなり距離を詰められた心地がして体が強張ってしまう。  「水曜の夕方なら時間は空いてる。そのくらいの時間なら、アスカちゃんも学校から帰ってきてるだろ?」  「じゃあ、俺も行く! 料理のこと、もっと知りたいし!」  クレイが元気よく手を挙げて立ち上がる。まだひと月程とはいえ、同じ家で暮らしている人が一緒なら、とアスカは少しだけ緊張を解いた。  それに、駿のような料理のプロに教えて貰える機会なんて滅多にない。そう思うと、次第に気持ちが前向きになっていく。  「じゃ、じゃあ……お願いしてもいいですか?」  意を決してアスカが頭を下げると、駿は任せろと言わんばかりに親指を立てて見せた。
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